キミと掴む、第一歩。

 その言葉を聞いた時、わたしはそんなに驚かなかった。だって、そうだろうな、って思ったし、それはもはやみんなの共通認識みたいなものだと思っていたからだ。

 瀬尾くんはサッカーが上手だ。

 たぶん、サッカー選手になるためにこの世に生まれてきた、みたいな。この人はきっとやり遂げるだろうという雰囲気を感じ取ったのは、わたしだけじゃないはず。

 いわゆる、天才だ。


 彼がプロになれなかったら、普通の人がどんなに努力してもなれないんじゃないかって思えるほど、飛び抜けた才能を持っている男の子。

 だから真剣な顔で打ち明けられたところで、そこまで驚かなかった。


「うん。頑張って、ね」


 他に何を言っていいのか分からなくて、平凡な回答だなと思いながらも言葉を返す。すると、少しだけ目を細めた瀬尾くんは「史倉は」と話し出した。


「俺の夢のこと、笑わないの?」

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