キミと掴む、第一歩。
 心の奥深くに、するりと差し込んでくる。こういう光が一番困る。どんなに壁を作っても、防ぐことができないから。


「面白いなんて思ってなくてもいいよ。自信がなくてもいいよ。俺は、好きだから」
「……っ」
「じゃあ、またね」


 彼が人気な理由が、なんとなく分かったような気がした。
 一目置かれるほどの容姿に加えて、誰よりもまっすぐな心を持っている。

 とくに好意がない相手にも、さっきみたいな対応ができてしまうんだ。だからあっさり落ちちゃって、みんな彼のトリコ。


 その人が欲している言葉を、その人が欲しているときにそっと渡してあげられる。余計なことは言わず、寄り添って、励まして、勇気づけてくれる。
 意見だけを淡々と告げるのと、アイデアを提案することのライン引きがすごく上手い人なんだな、と思った。
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