キミと掴む、第一歩。
記憶の底に眠るもの
 その当時、わたしは小学校四年生だった。物語を自分で考えてノートに書くことが楽しいと感じ、お話をつくれる自分にはもしかしたらすごい才能があるのかも、と思っていた。
 だから周りの友達に堂々と見せていたし、友達もみんな口をそろえてすごいと褒めてくれた。

 勉強も運動も平凡で、顔にも性格にも特徴がないわたしは、当然クラスのコケみたいにひっそりと生活していた。

 だから、小説を書くことがわたしの唯一の特技みたいなものだったし、他の人にはできないことをしている自分がとても誇らしかった。

 ただ、そのときのわたしは気づくことができなかった。すごい!と褒めてくれた友達が、誰一人として続きを読みたいと言わなかったことに。


 そして"その日"は、突然おとずれた。
< 16 / 65 >

この作品をシェア

pagetop