キミと掴む、第一歩。
「史倉は何してたの?」
「え……あ、わたしは……小説のアイデアが浮かばないかなって思って、散歩してた」
「あー! たしかにストーリーとかアイデアが降ってくるって言うもんな」
「そ、そんなっ、大したものじゃないけど……!」


 降ってくる、なんてたいそうな言葉、どこかの有名作家じゃないんだから。
 手を振って否定すると、ククッと笑った瀬尾くんは「相変わらずだな」と言った。


「続編、書いてくれてる?」
「書こうとは、してる」


 意思は伝えた。だけど、筆が一向に進まないということも。


「やっぱ難しいのかー」
「う、うん。ちょっとね」


 残念がるそぶりもなく、肩を落とすわけでもなく、瀬尾くんは考え込むようにしてそうぼやいた。

「続編ってことは、二人が付き合ってからの話ってことだよな」
「……!? そ、そうだけ、ど……」

 付き合う、というワードが瀬尾くんから出てきたことにびっくりして、アタフタしてしまう。自分で書いているくせに、まだ恥ずかしいワード。
 それを案外さらっと言ってのけた瀬尾くんは、もしかしたら慣れているのかな……。


 そこではた、と考える。

 瀬尾くんに彼女がいないなんて、わたしはいつからそう思い込んでいたのだろう。
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