キミと掴む、第一歩。
その日はすごく荷物が重くて。きちんと閉めたはずのカバンが、半分開いていたことになんて、まったく気がつかなくて。
教室に置き去りにされたノートは、"あの頃"のものより三つほど新しいもの。
「ゆきり! カバン半開きだよ!」
家に帰る途中でたまちゃんに指摘されて、ようやく気付いたわたし。そして同時に、中に入れていた小説ノートがなくなっていることに気がついた。
サアッと血の気が引いていく。
また同じことを繰り返すの?
わたしはまた気持ち悪がられて、自分を否定するの?
誰かに見つかる前に探さなきゃ。
「たまちゃんまた明日っ」
「ちょ、ゆきり!?」
「用事思い出した!」
たまちゃんならきっと分かってくれるだろう。こんなふうに詳しいことを言わずに走り出しても、あとから謝れば呆れながら許してくれる。すごく、すごく優しい子だから。