キミと掴む、第一歩。
 けれどまたすぐに、疑問点。

「え、でも瀬尾くん、今部活中だよね……? はやく戻らないとまずいんじゃ…?」
「そーだね。でも聞いて史倉」

 にっと笑った瀬尾くんは、人差し指を立ててわたしに見せた。


「俺が部活に遅刻するときは、この三つのうちのどれか。まず1、怪我をしているときや体調不良のとき」


 そして中指も立てる。


「2、課題が終わっていないとき」


 さいご、3。


「────好きな子が、困ってるとき」


 息を呑んだわたしに、悪戯っぽく笑った瀬尾くんは「どれだと思う?」と問いかけた。

 そんなの、そんなのさ、瀬尾くん。
 そんな言い方したら、ダメだよ。


 どっくん、どっくん。鼓動が大きく鳴り響いている。


「……なーんてね。そろそろ行くよ、じゃあね史倉」
「あっ、せ、瀬尾くん!!」


 ん?と振り返った彼に、届くように。
 できる限りの大きな声と、笑顔を添えて。


「ありがとう……!!」


 ようやくお礼を口にすると、はにかんだ彼は手を振ってグラウンドへと駆けていった。
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