キミと掴む、第一歩。
 きっと、今試合に出したら瀬尾くんのケガが悪化するから、監督の賢明な判断の結果なのだろう。そして、彼もそれに従った。だったら外野がどうこう言う話ではない。
 たとえ、瀬尾くんが出場しなくて残念に思ったとしても。瀬尾くんに出てほしいと願ったとしても。

 決して、口に出してはいけないんだ。


「瀬尾くんがいないから金山くんの動きも悪いよ……」
「やっぱり二人そろってないとプレーしづらいんだよ!」
「なにやってるの監督っ!」


 いつもならすぐに点が決まるはずなのだけれど、今日は瀬尾くんという絶対的エースがいないから0点のままなんだと。わーわー騒いでいる女の子の一人がそう教えてくれた。

 なんとか点を入れられることは阻止しているものの、点は一向に動かず0ー0。

 時間だけがすぎていって、ハーフタイムを迎える。




「大丈夫なのかな、たまちゃん……!」
「どうだろうね」


 観客席にいたたまちゃんに駆け寄ると、曖昧に首をひねったたまちゃんは渋い顔をした。

「正直瀬尾くんがいないと金山くんもやりづらいだろうとは思うよ」
「瀬尾くんは出ないの?」
「うーん。これからの選手生命と、この試合に勝つのと。どっちがいいかって話だね」
「でもこの試合って結構大事な試合だよね?」
「まぁ……そうだね」

 わりと大きな大会で、瀬尾くんたちがこの試合のために練習してきたことを知っているから、余計に苦しい。

「でも監督、瀬尾くんのこと大事にしてるから無茶はさせないと思うよ」
「そう、だよね……」

 涙を流していた瀬尾くんの姿がフラッシュバックする。金山くんと一緒に、トレーニングをしていた姿も。
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