キミと掴む、第一歩。
 だって瀬尾くんは人気者だから、人脈ってものがわたしとはケタ違いに広い。

 だから瀬尾くんがノートの内容を言ってしまえば、すぐに広まってしまうだろう。しかも、悪いウワサは良いウワサよりも格段に広まりやすい。


 ごくりと唾を飲んで瀬尾くんを見つめる。

 お願いしなきゃ。言わないでって、頼まなきゃ。

 瀬尾くんはこのノートを見てたから、これが自作の小説だってことが確実に分かったはずだ。だからもう、誤魔化すという手はない。

 かと言って、瀬尾くんがわたしのお願いを黙って受け入れてくれるだろうか。たいして仲良くもないわたしの秘密を一緒に黙っていてくれるわけない。


 そんな考えがぐるぐると脳内をまわるせいで、目の前の彼が悪魔に見えてくる。『誰からも人気な瀬尾くん』の本当の姿なんて、本人にしかわからないのだから。

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