キミと掴む、第一歩。
「あの、それは……」


 はやく、はやくと思えば思うほど、喉が詰まって声が出ない。じわじわと身体が熱くなる。
 ぎゅっとノートを抱きしめて、目をつむったその時だった。


「これ、史倉さんが書いたの?」


 期待を含んだ、声。彼のその問いが、わたしを嘲笑うためのものではないと確信できるような声だった。

 ハッと顔を上げると、声以上に期待を含んだ瞳が、まっすぐにわたしを見ている。
 途端、ドクっと心臓が跳ねて、一瞬時が止まったような感覚がした。


「え、あ……」


 うん、と言う代わりに、こくんとうなずく。するとわたしに近寄った瀬尾くんは、わたしの肩に手を乗せて「すげえ!」と声を上げた。
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