気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「――、叶愛?」
はっとした。
顔を上げたら歴くんがいた。
……あれ?
「なに。どーしたの」
屈みこんで目線を合わせてくれる。
またあの甘い香りがした。
「……歴くん、いなくなった……のかと思って、」
なんでもないですと答えるつもりが、そんなセリフが勝手に口をついて出る。
「俺がいなくてびっくりしちゃったのか」
「……は、い」
「へーき。どこにも行かない」
口調が突然柔らかくなるたびに、どきっとする。
基本的に、ベースは冷ややか。その上におらおらと、ごく稀に甘々が乗っかっている感じ。
この人、前にも思ったけど振れ幅が大きすぎる……。
「煙、猫にも悪いかなーと思ってベランダ行ってた」
「え……あ、たば、こを吸いにですか」
「うん」
「わざわざ、ありがとうございます」