気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
夜の名残か、微妙に重たい体を起こす。
事務所らしき室内に人影はない。
衣装ケースもそのままだ。
静まり返った空間を眺めても、ひとりにされた、と悲しい気持ちにはならなかった。
歴くんは人を捨て置いていくようなマネはしないと、不思議と確信を持てたから。
陽はけっこう高く昇っているみたい。
まろんには夜に猫缶をあげたきり。
ご飯を買いに行きたいけど、勝手に出ていくのも気が引けるし、
そもそも、ここが街のどの辺に位置するのかもわかっていない。
歴くん、お仕事かな。
あと何時間したら帰ってくるんだろう……。
連絡をとろうにも手段がなく困り果てる。
それに……あと一つ、何か大事なことを忘れている気がする。
私がすべきこと──そう。
「わっ、学校……!」
急いで部屋を見渡した。
事務用デスクの上に吊るされている時計の針は、十時を指している。