気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
そう。
仮に婚約の話が進んでも、一番初めに家同士の壁がぶ厚すぎるという問題にぶつかる。
格下の黒菊家は、京櫻家の権力に屈服して結婚を受け入れる可能性も考えられるけれど、
そもそも京櫻家が、私なんかとの結婚を認めるはずがない。
蘭野家よりはるかに絶大な権力を誇っている京櫻家。
蘭野家にすら縁談を断られた女を嫁にするなんて恥もいいところだと思う。
「っく、あはは」
すると突然、龍くんが笑い声をあげた。
「ど、どうしたんですか」
「歴君の親は、歴君のいいなりなので大丈夫ですよ」
「言いなり?」
「甘やかしてるって意味じゃないですよ。恐ろしさのあまり言うことをきくしかないんです。歴君は実の親でも手に負えない怪獣ですからねー」
歴くんを怪獣呼ばわりした龍くんはなんだかご機嫌な様子で。
「食べ終わったら声掛けてください。一服してくるんで」
と言うとベランダのほうへ歩いていった。