気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
思えば、社交会でもそういう風景ばかり見ていた覚えがある。
黒い車から降りて来る偉い人の周りには、前後左右、少なくとも四人以上の用心棒さんや秘書さんが常についていた。
もちろん運転手はまた別にいる。
もはやあたりまえの光景として目に映っていたけど。
片や歴くん。
思い返してみれば、お店に現れたときも車でお店まで送ってくれたときも、一緒にいたのは龍くんだけだった。
それほど人間関係に潔癖なのに、よく知りもしない私と結婚して大丈夫なのかな。
またしても新たな不安の芽が現れる。
「だから叶愛サンをお嫁さんに欲しいって聞いたときはびっくりしました」
思考を読んだかのようなタイミングでそう言われ、バクンと心臓が跳ねた。
「あの人まじで自由奔放なんで、結婚とか一生しないと思ってました。法律に縛られる関係とか面倒くさいじゃないですか」