気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
古びた外観からは想像できないくらい、シンプルながらも高級感のある空間だった。
ホテルと言われても違和感がない。
中身をまるごと改築したみたいだ。
エレベーターを降りると灰色のカーペットに敷き詰められた長い廊下があった。
突き当りの部屋の前に、スーツ姿の男性がひとり立っているのが見える。
近づくとかすかに煙の匂いがした。
歴君のものとは全然似ても似つかない少し苦味のある匂い。
「お疲れ」
扉付近にいたひとりが龍くんに声を掛けた。
ついでに目があったので、慌てて会釈を返す。
さっきの彼らとは違って龍くんと対等な感じ……。
恐らく側近の人だろうな、と思う。
「歴君は中に?」
「ああ。だいぶ長引いてる」
「んもー……。歴君の手に掛かれば十秒で吐かせられるくせに。完全に遊ばれちゃってますね、相手の男」
大げさに肩をすくめてみせる龍くん。
遊ばれてる……?
いったいなんの話だろう。