気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

「目ぇ覚めたの」

「、はい……」

「じゃあ風呂にでも入るか」



パソコンの電源を落としながら歴くんがのんびりと言う。



「わかりました。沸かしてきます」

「馬鹿。沸かして来いって意味じゃねぇよ」

「え……でも、お風呂に入られるんですよね?」

「お前はメイドなのか?」

「………」


仮にも令嬢だから、家事の能力なんてないと思われてるのかもしれない。

体を差し出す以上の価値はお前にないと言われているようで少し悲しくなった。



「確かに、家にはお手伝いさんたちがいましたけど、私も基本的な家事くらいはできるので、少しはお役に立てると思います」

「お前はここにいるだけで十分役に立ってるからいいよ」

「でも……」



その先に続くセリフが見当たらない。

この漠然とした不安のようなものを、上手く言語化できないのがもどかしく感じる。

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