気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

目的は叶愛との婚約を認めさせることだけど、この男にとっては、あくまで仕事の商談として話を持ちかける。


だから黒菊家を訪れることは叶愛には話していないし、叶愛が学校に行っている時間帯に都合をつけさせた。



「文書でもお伝えしておりました通り、弊家との事業提携につきましてご相談に参った次第でございます」



叶愛の父親は黙って話を聞いていた。

話の概要を大雑把にまとめたものを事前に送っていたから、この男の中ですでに結論は出ているはずだ。


跳ね除ける気でいたなら、テーブルに資料を広げる前に断りの姿勢を見せているだろう。


交渉で失敗した試しはない。

それでも万が一話を見送られそうになった場合を想定してあらゆる話の計画を練っていたが

途中で遮られることもなく、予想よりもあっさり商談が成立した。


実の娘をひとり差し出すのに、この男はなんの躊躇いもないのか。

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