気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
娘の心配じゃなく、家の心配……ねえ。
薄々そうだろうと思っていたことが確信に変わる。
叶愛はこの家で虐待されていた。
あの子は必死で体を隠していたけど、朝方、眠っている彼女の衣服を整えてやる際に、体に痣があるのが見えた。
寝ながら時折うなされているのも恐らくそのせいだ。
離れで暮らしていたこと、コンカフェで働いていたことも踏まえて間違いない。
ふと、殺してやろうかなという気になる。
もちろん見張りがごまんといる中で手を下すほど馬鹿ではないし、きちんと働いた理性が止めてくれた。
仮にこの男がこの世から消えたとしても、叶愛の傷が癒えるわけじゃない。
「承知いたしました。それでは、この件は秘密裏に進めさせて頂くということで。詳しいことはまた後日」
最後まで人当たりのいい笑みで対応し、部屋をあとにした。