気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす


「お兄さん……待って!」


黒菊家の門を抜けたあと、何やらつけられている気配を感じたが、まさか子どもだと思わなかった。


ランドセル……小学生か。


黒菊の家の中から追いかけてきたわけではなさそうだった。

学校帰りに、たまたま俺を見かけて駆け寄ってきた……という感じ。


知っている顔ではない。



「お兄さんて、京櫻の……人ですよね」

「そうだけど。何?」

「叶愛お姉ちゃんと、結婚するんですか?」

「………」


……叶愛の弟。

実母は亡くなってるはずだから、後妻との間にできた息子だろう。



「少し前に、父上と母上が話しているのを聞いたんです。叶愛お姉ちゃんを取らないでください、お願いします……!」



頭を下げられて戸惑う。
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