気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「お疲れ様です歴君。今忙しいっすか〜?……っすよねー、すいません。昨日家に帰らなかったって叶愛サンに聞いたもんで」
スマホ越しに歴くんの声はわずかに聞こえるものの、内容は聞き取れなかった。
「……あ、そうなんですねー。……はい、了解です」
通話が終わったらしく、龍くんが運転席から振り向いた。
「働き詰めで事務所で仮眠取ってたみたいです。でも、今日は19時頃までにはちゃんと帰るらしいですよ!」
「っ、ほんとですか。ありがとうございます」
「いえいえ。あ、てか叶愛サンに代わればよかったですね。気が利かなくてすいません」
「とんでもないです。忙しい歴くんのお時間奪うわけにもいかないので」
そう言うと、くすっと笑われる。
「未来のお嫁さんなんだから、もっとワガママになっていいですよ」
「いえ、そんな……まだ正式に婚約したわけでもないのに」
そう言いながらも顔がじんわり熱を持った。