気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
そうだった。彼はお客様なんだ。
「お帰りなさいませ、っ、旦那様」
再びお辞儀をして、今度はきちんとお出迎えの姿勢をとる。
京櫻さんばかりに意識がいって気づかなかったけど、彼の後ろにはもうひとり男性がいた。
目が合うと、小さく会釈される。
にこやかながらも隙のない雰囲気に、〝そっち側〟の世界の人だと肌で感じ取ることができた。
……用心棒の人、かな。
「お忙しい中ご足労いただきありがとうございます、歴さん〜」
きらりさんが来てくれたことで、彼の視線はようやく私から離れていった。
「盛況のようで何よりです」
「全部歴さんのご支援のおかげですっ」
「いやいや、きらりさんの頑張りですよ。可愛いキャストさんも新たに捕まえられたみたいで、今後がますます楽しみですね」
“歴さんのご支援”……?
ふたりの会話に違和感を覚えたと同時。
「そうなんですっ、2ヶ月前に入ったばかりの期待の新人ノアたん! どうぞご贔屓に!」
「っ、わあっ!」
がしっと肩を掴まれるやいなや、再び京櫻さんの前に押し出されてパニックになる。