気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす


.



「あのー、叶愛サン。つかぬことをお聞きしますけど、歴君と喧嘩でもしたんですか?」

「いえ……喧嘩というか……」

「そーいうのは、早めに話合ったほうがいいですよ? のちのちこじれて面倒なことになりますんで」

「あはは、そうですよね」



ただの喧嘩だと思い込んでいる龍くんに本当のことを相談する勇気もなく、今日も今日とてあいまいな返事で誤魔化してしまう。


いくら忙しいからと言っても、帰って来ないのは、さすがに避けられてるとしか思えない。



どうしてだろう……。


私が歴くんを避ける理由はあっても、歴くんが私を避ける理由はないのに。


もしかして、玄関での一件で、私が嫌がる素振りを見せてしまったから……?
面倒な女だと思われた……のかな。


考えてもわかるわけがないことを延々と考えてしまう。


おかげでちっとも眠れない。

< 172 / 271 >

この作品をシェア

pagetop