気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす


『極悪人がお姉ちゃんを幸せにできるわけない』


……あーあ。返す言葉もないな。

叶愛を傷つけた俺は、あの子を虐待していた父親となんら変わらない。


家に帰ったってどうせ拒絶されて……――。



「そういえば放課後迎えに行ったとき、叶愛サン、なんか様子がおかしかったんすよねー」



煙草に火を付けながら、突然、龍がそんなことを言った。



「おかしかった?」

「はい。顔色も悪くて、なんか目も虚ろな感じで……。暖房ガンガンきかせてたんですけど、今日は寒いですね……とか言ってたし」

「――は?」



直後、心臓が嫌な音を立てる。



「……。なんで今まで黙ってた」

「あ、すいません。叶愛サンが大丈夫と仰ってたんで大丈夫なのかなあと、」


「っ、大丈夫なわけねぇだろ!」

「は、はいぃぃ、すいません!」



ポケットに車のキーがあることを確かめて部屋を出た。

エレベーターを待つ暇も惜しくて階段を駆け下りる。


「歴君、待ってください! オレが車出しますんで!!」


慌てて追いかけてくる龍を無視して、構わずアクセルを踏み込んだ。


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