気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
落ち着つかなきゃ。
私は黒菊叶愛じゃない。MAPLE PALACEキャストの……
「ノアです、よろしくお願いいたします」
深々とお辞儀をし、恐る恐る顔をあげた先で、真っ黒な瞳がすうっと細められる。
きらりさんと話していたときの柔和な笑みとは違うどこか鋭さを秘めた表情に、たしかな戦慄を覚えた。
彼の周りだけ異様に温度が低く感じるのは……私だけ?
「歴さん、よかったらお席にご案内しますよ!キャストも歴さんが来られるのを楽しみにしていましたし……いかがですか?」
きらりさんが声をかけた。
やっぱり……彼は“お客様”じゃないみたい。
会話からして、お店に顔を出しに来ただけ、という状況がしっくりくる。
「せっかくですが、これにて失礼いたします。生憎あとにも予定が詰まっておりまして」
答えたのは、京櫻さんの後ろに立つ用心棒らしき人だった。
「わーんそうでしたか〜っ。お忙しいにも関わらず顔を出していただきありがとうございます〜」