気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「な、なので、歴くんが気を負う必要は、なくて──」
「俺ね、びょーきなんじゃないかってくらいお前のことばっかり考えてて」
「っ、え?」
「その気持ちが一回度を越して、お前に酷いことした」
……酷いこと……?
玄関での、ことかな。
たしかにあのときはびっくりしたけど、酷いことをされたとはもう思ってない。
それまでが優しすぎたから、違いに戸惑っただけ。
「全然気にしてないです、最初の歴くんみたいに優しく……してくれる男の人のほうが少ないと思うし……、本来はあれが普通だと思うから……」
のろのろ答える私を歴くんはしばらく無言で見つめていた。
「お前って、いつもそうやって耐えてきたんだな」
「え?」
「傷つけられても、それが“普通”だって思い込んで、自分は大丈夫だって」
「……っ」