気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

歴くんは私の知らないうちにお父さんに婚約の話を取り付けてくれていたらしく、

その話を聞いたときはびっくりした。


証拠として、何やら難しそうな書類に記されているサインを見せてもらうと、間違いなくお父さんの筆跡で。


私が誕生日を迎えるまではまだ先だけど、本当に歴くんと結婚することがようやく現実味を帯びてきた。



黒菊家の一存で、婚約も婚姻も公にはならないらしい。

小さいころ、好きな人との結婚式をあげることに密かに憧れを抱いてたけど……こればかりは仕方がないよね。


これは政略結婚。
ふたりが愛し合って結婚するわけじゃない。


私は歴くんのことが好きだけど……歴くんはたぶん違う。

毎日これでもかってくらい甘やかしてくれるけど、『好き』とは一度だって言われてないから。

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