気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
だから、話す機会を避けてきたけど……。
目の前に立つ人を無視なんて、できるわけもなく、笑顔をつくって向かい合う。
「おはようございます、蘭野くん。今日も寒いですね」
当たり障りのないあいさつをして、すぐにその場を去ろうとしたのを、目敏く引き止められた。
「待って、話したいことがある。今から時間いい?」
「あ……えっと、」
「この前はごめんね! 父さんが急に別の縁談を受けるって言いだして、逆らえなくて……」
ああ……やっぱりその話だったんだ。
「とんでもないです、謝らないでください。お父様が蘭野くんに相応しい方を選ばれるのは当然です」
「っ、違うんだ。あのあと、俺が説得して、その縁談もなかったことにしてもらったんだ」
「……え?」
予想外のセリフに上ずった声が出る。
「どうしてですか……」
「好きでもない人と結婚できるわけないだろ?」