気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

「きらりさん、あの……っ」

「ノアたん〜すごいすごいっ! 歴さんのご指名もらったキャストなんて今までいなかったんだからっ!!」


ぎゅうぎゅう抱きしめてくる腕も、今日ばかりはやんわり解かせてもらう。


「そのことなんですけど、“歴さん”って、このお店とどういう関係なんですか……っ?」


聞けば、概ね予想通りの答えが返ってきた。


MAPLE PALACEは、京櫻組の傘下にあたる組織が経営しているお店なのだそう。

京櫻組の次期当主である歴さんがすべての傘下組織を取り仕切っていて、このお店の立ち上げにも携わっていたらしい。



………甘かった。

この街は京櫻組の支配下と言っても過言じゃないんだから、繁華街に系列のお店があるのは当然のこと。

バイトに応募するとき、どうしてオーナー側の情報まで調べなかったんだろう。


過去の自分を責めながら、京櫻さんのいるVIP席にのろのろと足を運んだ。

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