気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「それは、そうですよね」
一度は勢いにつられて頷いてしまったものの、矛盾に気づいて首を傾げる。
私との縁談が進んでいたとき、蘭野くんは政略結婚を難なく受け入れているように思えた。
てっきり、家のためにきっぱり割り切っているんだとばかり……。
「僕はずっと叶愛ちゃんのことが好きだったんだよ」
思考に被せるように放たれた声に、一時的に思考が停止する。
……は、……え?
「父さんには、本気で好きな人と結婚したいからって何度も説得したんだ。今度こそ僕と結婚してほしい」
「……、い、意味が……、よく、わかりません」
嘘、日本語の意味は理解できる。
ただ処理が追い付かないだけ。
あのときと似てる。
歴くんに、何の前触れもなく結婚しようかって言われたときと。
でも、あのときと違って、体からは熱が引いていく。