気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「っ、やめてください! 瑠衣だけは……っ」
あの子はずっと私を気にかけてくれた。
父と義母が近くにいないとき、いつもそばにきて「大丈夫?」「何もできなくてごめんね」って泣きそうになりながら声を掛けてくれた。
黒菊を離れることを考えたとき、瑠衣だけが心残りだったんだ。
寄り添ってくれようとしたのに、父と義母に見つかったら瑠衣まで酷い目に遭わせられると思って、いつも優しさを跳ね除けるばかりで。
お姉ちゃんらしいことを、ひとつもしてあげられなかった。
こんな状態のまま瑠衣をあの家に置いて逃げて、自分だけ歴くんと幸せになるなんて、できない……絶対に。
「わかりました……。その話お受けします……」
「わあっ、ほんと?」
「っ、ただ父がなんと言うかはわかりません。結婚は、私の一存ではどうにも……」
「あはは、そんなの大丈夫だよ、この写真を今日の配達指定で黒菊家に送ったから」