気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

「っ、やめてください! 瑠衣だけは……っ」


あの子はずっと私を気にかけてくれた。


父と義母が近くにいないとき、いつもそばにきて「大丈夫?」「何もできなくてごめんね」って泣きそうになりながら声を掛けてくれた。


黒菊を離れることを考えたとき、瑠衣だけが心残りだったんだ。


寄り添ってくれようとしたのに、父と義母に見つかったら瑠衣まで酷い目に遭わせられると思って、いつも優しさを跳ね除けるばかりで。


お姉ちゃんらしいことを、ひとつもしてあげられなかった。


こんな状態のまま瑠衣をあの家に置いて逃げて、自分だけ歴くんと幸せになるなんて、できない……絶対に。



「わかりました……。その話お受けします……」

「わあっ、ほんと?」

「っ、ただ父がなんと言うかはわかりません。結婚は、私の一存ではどうにも……」


「あはは、そんなの大丈夫だよ、この写真を今日の配達指定で黒菊家に送ったから」


< 224 / 271 >

この作品をシェア

pagetop