気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
ここにはもう、戻って来られないかもしれない……。
歴くんは今日は遅くなると言っていた。
もうしばらくは帰ってこないはず。
おもむろに立ち上がって、必要最低限の荷物をまとめた。
心の中がずっと空っぽだった。
悲しいはずなのに涙も出てこない。
ハンバーグ……つくろうと思ってたのに……。
またしばらくぼうっと部屋を見つめていると、まろんがぴょんと膝に乗ってきて、ハッと現実に戻る。
「まろん……一緒に、帰ろっか……」
抱き寄せてしばらく考える。
──『ちなみに、君の父上に認めてもらったらすぐに僕の家に住んでもらうから』
前に、蘭野くんは猫アレルギーだと聞いたことがあるのを思い出した。
もし本当に蘭野くんとの婚約が進んでしまったら、まろんは連れていけない。
かといって屋敷にも置いていけない。
お義母さんが大の動物嫌いだからきっと捨てられてしまう。