気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
いつの間にか、京櫻さんの手中には私の名刺があった。
制服の内ポケットから抜き取ったんだ。
それを見せつけるように顔の前に近づけられれば背筋が冷えた。
じわり、思わず涙目になる。
「ごめんな、さい……」
「謝ったら許されると思ってんの?」
「……それ、は」
焦りのあまり視界がぐるぐると回り始めた。
普通のお客様なら、誠心誠意をこめて謝罪すれば許してもらえるだろうけど。
相手は、京櫻の……───。
「……嘘、嘘。ちょっと脅してみたくなっただけ。お前がどんな反応するかなーって」
「……え?」
「俺のこと“歴”って呼んだら許してあげる」
「……え……、え?」
語彙が「え」しかなくなってしまい、我ながらあまりにも間抜けだとは思うけど。
京櫻の息子さんに、そんな恐れ多いことできるわけない。