気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

歴くんがすぐに気づくようにリビングのテーブルに持っていくと、

そこには煙草と灰皿が置かれていた。


なんとなく手を伸ばす。

近くにライターもあった。


歴くんがいつも吸っていた煙草……。

私の大好きな匂い……。


いけないことだとわかっていながら、一本取り出しライターで火をつける。


おそるおそる咥えて、少しだけ息を吸った──────途端、むせる。



「ぅ、っ、……は、ぁ」


…苦しい……にがい……。

どうして?

いつも、あんなに甘いのに……。


長さがほとんど変わってない状態のまま灰皿に押し付ける。

部屋ると涙が溢れた。




「……っ、ふ……ぅ、歴くん……」



暗い部屋。

好きな人の名前は、煙とともに儚く消えていった。


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