気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
信じてくれるとは思わなかった……。
だけど、お父さんの表情は厳しいまま。
「しかし証拠がなければお前を誰も信じない。庇うほどの力も揉み消す金もない。……だまって蘭野くんと結婚しなさい」
「っ、待って、ください……」
心臓が早鐘を打つ。
さっきから、ずっと指先が冷たい。
「京櫻さんとの婚約は……どうなるんですか……? あちらとの契約のほうが先に決まっていたはずです」
「契約自体なかったことにする」
「っ、そんな……でも、」
「確かに京櫻との契約は家にとって莫大な利益になるが、お前の噂が出回ればそれも台無しになる。加えて、もともと蘭野くんと結婚させるはずだったんだ。迷う必要がどこにある?」
頭が真っ白になって言葉が出てこない。
希望があっけなく壊された。
「……歴くん……───」
ぐらりと視界が揺れる。
直後、なにもかも真っ暗になった。