気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「叶愛お姉ちゃん、入ってもいい?」
真夜中。
昔使っていた本邸の自分の部屋で、婚約の準備に向けて荷物を整理していると、扉をノックする音が聞こえた。
すぐには返事ができないでいると、扉がゆっくりと開いた。
「……瑠衣」
本邸に戻ってからも、ほとんど顔を合わせていなかった。
「お父さんとお義母さんは近くにいなかった? 大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
そういいながら、いそいそと私の隣にやってきて腰を下ろした。
「叶愛お姉ちゃん、結婚、よかったね」
「っ、え?」
「だって蘭野くんのこと、小さい頃からずっと好きだったんでしょ?」
「……───」
はっと思い出した。
最初に蘭野くんとの縁談の話が出た際、瑠衣に心配をかけないようにそんな嘘をついたんだった。