気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「俺はいつでもお前をクビにできるんだけど、それでも呼ばない気?」
「……っ!」
私に笑いかける顔とは裏腹に、言葉の端々はナイフみたいに鋭くて。
名前を呼ぶだけで本当に許してもらえるんだろうかとか、冗談なんじゃないかとか。
ごちゃごちゃ考えていたら、その隙に容赦なく、やられる……。
従うべきだと本能的に悟った私の口から
「……歴、……さん」
と、その名が零れる。
「だめだよ。呼び捨てにしないと」
「む、無理です、頑張っても歴“くん”が限界です……っ」
直後、はっとする。
恐れ多さに盾突いてしまった。
ど、どうしよう……っ。
今の発言を撤回しようと顔をあげた矢先、
「はは、そう」
どうしてか笑われ、戸惑う。
あれ? 怒らなかった……?
「“歴くん”も、まあ悪くないか……」
なにかを呟きながら席を立ち、私の名刺を片手にひらひらさせながら、最後。
彼は、にやりと妖しい笑みを残していった。
「じゃあね“ノア”ちゃん。また会いに来る」