気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「叶愛サン?」
「もう……無理、なんです……、私……今日から──」
ふと、龍くんの手が離された。
──ううん、違う。
“引き離された”んだ。
「僕の婚約者に勝手に触れないでもらえるかな」
気づけば間に蘭野くんが立っていた。
驚く暇もないまま腕を取られる。
「行こう、叶愛ちゃん」
「あ……」
間もなくして蘭野家の車がそばの道路脇に停車した。
「叶愛サン、待ってください!」
龍くんが叫ぶ。
「あなたが出ていった日、帰りが遅くなるって歴君が言ってたのは、仕事終わりに寄る店があったからです!」
え……?
寄る店……?
「耳傾けないで、さっさと車乗って」
蘭野くんに押し込まれる。
ドアが閉まる寸前、
「指輪を受け取りに行ってたんです、その日の夜、あなたに渡すつもりで……っ」
──────最後にそんな声を聞いた。