気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
叶愛の弟──瑠衣の視点から話をまとめるとこうだ。
ある日、蘭野の名前で封筒が送られてきて、両親がなにやら騒いでいた。
同日、叶愛が突然屋敷に帰ってきた。
父親の書斎に入っていくのが見えて、こっそり壁に耳をつけて盗み聞くことにして。
すべての会話が聞き取れたわけじゃないが、父親が『蘭野と結婚しろ』と言っていたので、姉は幸せになれると思い、その場を離れた。
後日、改めて父親から姉の婚約の話を聞く。
その日の夜、『おめでとう』という瑠衣の言葉に対して、叶愛はどうしてか泣き始めてしまった。
尋ねても『なんでもない』と言われ部屋を出て行かされて。
しばらく扉の手前に立っていると、中から鳴き声が聞こえてくる。
……泣き声に紛れて、ときどき俺の名前も。