気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
力じゃ敵わない……。
歴くん以外の人に触れられたくない。
歴くんに触れられたところを他の人に触れたくない。
そんな強い思いも、力の差を見せつけられたことによってだんだんと崩れていく。
結婚すれば、今後、どうせ逃れられないんだから。
歴くんはもう私のことなんか忘れて、他の人と一緒にいるんだから。
抵抗したって意味ないんじゃないの……?
ぎゅ……と目をつぶったときだった。
「──坊っちゃま。少しよろしいですか」
ベッドの仕切りの奥、部屋の扉をノックする音とともにそんな声が聞こえた。
お屋敷の使用人さんだ。
蘭野くんは小さく舌打ちをして、ベッドを下りていく。
「なんの用?」
「それが……応接間に、お客様がお見えになっておりまして。坊っちゃまを出してほしいと……」
「はあ? こんな夜更けに誰? 非常識すぎる、帰してくれ」
「申し訳ございません……。しかし、お相手が京櫻の息子さんでして……。坊っちゃまが出て来られるまで帰らないと仰るのです」