気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
……え?


息が止まりそうになった。


きょう、ざくら……?

今、聞き間違いかな……。


急いでベッドから降りる。



「っ、僕が来るまで待つって言うなら一生待たせとけばいいだろ……!」

「で、ですが……っ」


その直後だった。

使用人さんの後ろから、ぬっと人の影が現れたのは。



「客人を待たせるなんざ、いい躾されてますねぇお宅」



──龍くんだった。

信じられず瞬きをする。


ど、どういうこと……っ?


その姿は確かに龍くんだったけど、いつものにこやかな笑みはどこにもない。


歴くんに似たぞっとするくらい冷たい目で蘭野くんを見据えている。


使用人さんは「きゃあっ」と声を上げて逃げていってしまった。

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