気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

それに、京櫻の名前を出せば強制的に目立ってしまうので困る。

噂を聞きつけた上流階級のおじさま方がお店を覗きに来たりしたら一巻の終わり。


良家の娘がアルバイトをしているなんて世間に知れたら笑い者にされてしまう。


私自身はどう思われてもいいけど、黒菊家の品位に関わることだから常に細心の注意を払わなくちゃいけない。


社会性を身に付けるための勉強としてならともかく、繁華街の、しかも男性に奉仕するお店で働いているなんて言い訳のしようがないもん……。


恥ずかしいものだとは少しも思っていないし、むしろお客様に癒やしを与える素敵なお仕事だと胸を張れるけど、
プライドで汚れたこの狭い財閥界隈では端から理解されないのが現実。



黒菊家のためにも、自分の行動を再度見直さないとなあ……。


歩みを止めて空を仰ぐ。

いつものように星を眺めて心を休めるつもりが、空は真っ黒に支配されていた。

底がない夜闇は無限に続く孤独に似ている。

いっそこの中に溶けてしまえたらいいのに。
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