気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「――叶愛様」
暗がりから突然声が聞こえ、心臓が縮まった。
見ると、門前に誰かが立っている。
俯いて歩いていたせいで全く気づかなかった。
ゆっくり近づいて、見知った顔であることを確認する。
本邸の使用人さんだ。
わざわざ私の住む離れの屋敷まで来たってことは……。
ひどく嫌な予感が足元から這い上がってきた。
「お久しぶりでございます。お元気でしたか?」
「……。どういったご用件でしょうか」
離れに”追いやられた”娘に、お元気でしたか?……か。
本人はそんなつもりはないのかもしれないけど、皮肉的に受け取ったはずみでつい冷たく言い放ってしまう。
「旦那様より大事なお話があるとのことで、叶愛様に本邸までお越しいただきたく、お迎えに参りました」
「え……? 今から……、ですか?」
「はい。よろしいですか?」
さすがに予想外の回答だった。
ずいぶんと急な話。一体何があったんだろう。