気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「少しだけ待っていてもらえますか。……寒いので上着を羽織りたくて」
「かしこまりました。車は門前に付けておきますので」
軽く会釈をして屋敷の中へ急ぐ。
上着を羽織りたいというのは口実。
部屋でまろんがお腹を空かせて待っているから、早くご飯を与えないと。
まろんは、私が離れで生活するようになってから間もない日に出会った、茶トラの捨て猫。
本邸だと、飼うことは絶対に許されなかったと思う。
ふわふわの茶毛に白の困り眉が可愛いまろんと一緒に眠る時間がとても幸せで、
私がひとりでもなんとかやっていけているのはまろんのおかげに他ならない。
「まろん、遅くなってごめんね……っ」
部屋の扉を開けると「ナァ〜」と甘えたように鳴きながら足元にすり寄ってきてくれる。
「へへっ、お出迎えありがとう〜。すぐご飯用意するね」
キャットフードを入れた器を差し出して、まろんが食べるのを少しの間だけ見守る。