気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

……“けっこん”。

“らんの、の、むすこ”。


頭の中で反芻してみても、イメージとして全く浮かび上がってこない。


「……今、なんと」


そういえば、私の幼なじみのご令息に、蘭野雅也(まさや)くんという男の子がいたけれど。

──ううん、まさか。



「お前は結婚するんだ。結納は来週の土曜。詳細は使用人を通じて知らせるから離れに戻って待っていなさい」


話は以上だ、と。

それだけ告げて、父も義母も席を立ち、そそくさと部屋を出ていこうとする。


……いったい、何の、冗談?



「……待、ってください、お父様っ」


鬱陶しそうに目を細められても、今は怯んでいられない。



「急に結婚だなんて言われても受け止めきれません。だいたい私はまだ十七で……」

「籍を入れるのは半年後のお前の誕生日だ」

「え……」

「結納は式の半年前に執り行うのが常識だろう。お前はそんなことも知らないのか」
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