気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
「瑠衣のせいじゃないよっ、政略結婚なんてこの界隈じゃ当たり前なの。黒菊家のための結婚なら、私はちっとも苦じゃないから……ね?」
「………」
それでも表情が晴れない瑠衣を見て、咄嗟に頭を回転させる。
泣いてしまうほど自分を責めていたんだ。
中途半端な慰めでは私が離れに戻ったあともきっと一人で抱え込んでしまう。
何かもうひとこと、安心させられるような言葉があれば……。
……そうだ。
「それにね瑠衣。みんなには内緒だけど、実は私ずっと前から蘭野くんのこと好きだったんだ」
「……え? そう、なの?」
「うん。その蘭野くんと一緒になれるんだから幸せ。むしろ感謝したいくらい」
「そっかあ……。なら、よかっ、た」
やっと心の底から安堵したように笑ってくれた。
瑠衣は、私が罵倒を浴びせられたり暴力を振るわれたりしたあと、
いつもこっそり駆け寄ってきて「大丈夫?」と声をかけてけれた。
そんな優しい弟のためなら、自分の気持ちに嘘を吐くことくらい容易い。