気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
枯れていく花
𓆸 𓆸



「──おい、ノア」


週明けの月曜日。

いつものようにバイト先に向かっていると、繁華街に入る直前にどこからか呼び止められた。


“ノア”──?


店外で源氏名を呼ばれたことに、一泊遅れて焦りがやってくる。

いったい誰……。



「ノア」


今度は強めに呼ばれる。

足は地面に張り付いたまま、視線だけをなんとかそちらに向けると、黒塗りの車があった。


後部座席の半分開いた窓から、小さく手招きをされる。

──京櫻さんだった。


条件反射のごとく一歩身を引いた。


……大丈夫。

制服はパーカーで全て隠れているし、駅ビルで新調したメガネもかけている。

黒菊の娘だと疑われる要素はない。


一向に動かない私に痺れをきらしたのか、京櫻さんが車から降りてこようとしたので、慌てて駆け寄った。



「ど、どうも……先日はご指名ありがとうございました」

「今から店に行くんだろ。乗れよ」

「へ?」
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