気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
顔を近づけられればドクン!と心臓が跳ねた。
暴力的に綺麗な造形だ、なんて一瞬余計なことを考える。
「次”京櫻さん”って呼んだら、お前のことクビにするよ」
「っ、ぅ……」
軽い口調且つこの前と同じ安直な脅しでも十分に肝が冷えてしまうくらい、彼の声や瞳には決まってどこか鋭さがある。
「いいのかそれで」
「……だめ、です……、……歴くん」
相手を意のままに従わせる魔法でも使ってるのかもしれない。
何が面白いのかくすっと笑われ、首から上が熱を持つ。
完全にからかわれてる……っ。
もうやだ、この車に乗るんじゃなかった。
お店に着くまでもう話しかけられないように、窓の外を向いてじっと耐えた。
歩いて向かうよりも長く感じるという地獄のような時間だった。