気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

急いで降りようとドアハンドルに手をかけるも、運転席でしか開閉操作ができないのか、びくとも動かず。

大人しく開けてくれるのを待っていたけど、一向にその気配がない。


「あのすみません、ドアを──」

「細いな」

「へ?」


勇気を出して声を掛けたことに対し、なんの関係もない単語が返ってきてキョトンとする。


「お前ちゃんと食ってる?」


おもむろに伸びてきた指先が、首筋の輪郭をつーっと撫でる。


「ひぁ……」

「触ったらすぐ壊れそう」


そのまま、滑るように胸のあたりまで下りてくるからびくっとした。



「細っそいし胸も小さいし」

「っ、あ……、やぁ、」

「けど相変わらず体は敏感なんだな」


耳元で囁かれ、ぞく、と甘い刺激が駆け抜けた。

うそ、運転手さんもいるのに……こんな……っ。


これ以上、声が漏れてしまわないように唇を噛む。

目の前の相手が何を考えているのかまったく読めない。


「毎晩お前を可愛がってる男でもいんの?」
< 41 / 271 >

この作品をシェア

pagetop