気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
さらに、よくわからないタイミングで声のトーンを落としてくる。
殺意に似た冷たさがあった。
けれど不思議と恐怖はなかった。
それに、服の上から肌をなぞられても、なぜか、いやらしいことをされているとは感じない。
強くも弱くもない一定の力で、ただ淡々と確かめるように触れてくるだけ。
彼の瞳は野生的だけどその中に情欲は一切見えず、私という人間を真剣に探っているように思え。
──暴かれる。
はっとして身を引いた。
……危ない。これ以上この人の近くにいたら。
「歴君、もうそろ時間やばいです」
どうやって逃れようかと頭を働かせたとき、運転席からの声に助けられた。
京櫻さん──改め、歴くんは、しぶしぶといった様子で手を退けてくれる。
ドアロックが解除されたのがわかり、ホッと気が緩んだ、その矢先に。
「ノア」
「っん……」