気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす
いやいや。
十七にもなって、異性からキスされたくらいで腰を抜かすなんて普通はおかしいよね……。
いくら初めてだったからとはいえ……。
――異性に好かれるどころか家族からも嫌われている自分の身にこんなことが起こるなんて、誰が想像できただろう。
もちろん、さっきのキスが愛ゆえじゃないことはわかってる。
雑でもなく丁寧でもない口づけからは何の感情も伝わってこなかった。
それでも、今思い出してどきどきしているのは、触れた体温が思いの外あったかかったから。
私に暴力以外で無遠慮に触れてきた人は、彼が初めてだった。
相手は好きでもない、ましてや極悪と評される京櫻家の息子なのにヘンだと思う。
本当にヘンだとは思うけど……。
自身を暴かれることを恐れる裏で、どこか嬉しくもあったんだ。