気高き暴君は孤独な少女を愛し尽くす

あとは、私が総じて地味だから、というのもあると思う。


自分なりに笑顔を意識して明るく振舞う努力はしていても、
他のキャストさんの無邪気でパッと花がほころぶような可愛さにはとても適わない。


幸い、地味で口下手なメイドを所望してくれる物好きなお客様もいるので

お店の売り上げの妨げにはなっていないはずだけど、貢献しているとも言い難く……。


そんな私を彼女たちが気に入らないのは、あたりまえ。



『そのだっさいメガネとったら少しはマシになるんじゃないの?』


入店したてのころ、嫌味ついでのアドバイスをもらったことがある。

だけど、これだけは絶対に外せない。


私が黒菊家の──旧財閥である名家の娘だとバレるわけにはいかないから。



「そういえばさ、今日あの方が来るらしいよ」

「え、嘘ぉ!」


珍しくはしゃいだ様子で休憩室を出ていくキャストさんたちの会話を最後に、私はひとり、鏡台の前に座る。
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